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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)244号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。

二  取消事由(1)について

1  第一引用例の記載に関する審決の理由の要点2、本願考案の第一及び第二ビードと第一引用例記載の発明の補強リング及び補強芯の対応関係を除く審決の理由の要点4は当事者間に争いがなく、この事実に前記争いのない請求の原因二の本願考案の要旨、成立に争いのない甲第二号証(第一引用例)、第四号証(本願明細書)、第七号証(昭和五五年三月二四日付手続補正書)によれば、本願考案も第一引用例記載の発明も、副燃焼室付ジーゼル機関のシリンダーブロツクとシリンダヘツドの間に介装されるガスケツトのうち、シリンダヘツドの下面に嵌入して副燃焼室を構成する口金の周囲に接する部分が他の部分に比し熱歪が大きく、また、構造上口金とシリンダヘツドの間に生ずる段差の付近にある関係上、他の部分より面圧が低くなり同部分から燃焼ガスがもれることがあるため、その防止を目的とする補強手段に関する考案又は発明であること、本願考案の実施例によれば、ガスケツトはいずれも薄いステンレス鋼板である上板1下板2及びその間に挟装されかつ後記第一及び第二ビードを突設した中間板3により構成され、上板1はシリンダ孔4に沿つて折曲げられて縁どり部材5を形成し、右縁どり部材よりやや外側にシリンダ孔全体を囲むような形で中間板を突設させて溝状の第一ビード6を形成するとともに、口金bのやや外側部分を囲むような形で中間板を突設させた溝状の第二ビード7を形成し、かように構成プレートを形成する中間板に一体的に設けられた第一及び第二ビードが右中間板と共動することにより、前記のような口金周囲の熱歪及び構造上生ずる面圧低下を防止し、その維持をはかつていること、第一引用例記載の発明の実施例ではガスケツト1は金網或はフツク付金属板を基層としこれにアスベストゴム混和物を被覆したガスケツト用シート或はアスベストゴム混和物シート等の柔軟シートにより形成され、シリンダボア(シリンダ孔)11の周縁の表裏両面に薄板縁どり4、5を設け、右薄板縁どり内のシリンダ孔全周縁にわたり補強リング2を、また、口金の外縁よりやや外側の位置に口金を囲むような形で補強芯3を挿入し、右補強リング等がその両者間に挿入されたガスケツトの柔軟シートと同質の充填材と共動することにより、本願考案同様面圧低下を防止し、その維持をはかつていることが認められる。

この事実によれば、第一引用例記載の充填材が本願考案の中間板に相当し、前者では補強リング及び補強芯が充填材と、後者では第一及び第二ビードが中間板とそれぞれ共動して口金付近の面圧低下防止に機能していることが認められ、その各位置関係からみて、審決が認定するように、前者の補強リング及び補強芯がそれぞれ後者の第一ビード及び第二ビードに対応するものということができる(原告は第一引用例記載の発明の充填材は締付力を支える耐力材である旨主張するが、この主張は右認定の対応関係を左右するものではない)。

2  原告は本願考案と第一引用例記載の発明を対比し、別紙図面(二)の第5図及び第6図によれば、後者は補強リングと補強芯の間に隙間がありガスもれのおそれがある旨主張するが、本願考案において第二ビードの両端と第一ビードが隙間なく接しているとの構成要件上の限定はないから(実施例によるも本願考案には別紙図面(二)の第5図及び第6図に相当する図面の記載がない。)、右主張のような対比は相当ではない。また、原告は、本願発明と第一引用例記載の第11図及び第12図を対比して主張しているが、前掲甲第二号証によれば、第一引用例には二つの特許請求の範囲の発明の記載があり、審決が本願考案と対比したのは第一番目の発明であつて、原告が指摘する第11図及び第12図は第二番目の発明の実施例であることが認められるから、結局原告は審決が対比していない発明を取上げて主張していることになる。そうであれば、原告の右主張は失当である。

このほか、原告は補強リング等が第一及び第二ビードに比し圧縮応力に対する歪量が小さいことを理由にシール面の段差を吸収する機能の面で劣る旨主張する。しかし、前掲甲第二号証によれば、第一引用例には補強リング等の形状(断面丸形又は角形等)及び寸法(例えば断面丸形のときは断面径、断面角形のときは断面幅又は高さ)は適宜選定されることが記載されており、その実施例として充填材とは別途に形成された軟鋼線材又は軟銅線材等の円形中実体の補強リング等が記載されていることが認められるのに対し、本願考案の第一及び第二ビードは前記のとおり金属性の中間板に溝状の突起として一体に形成されたものであるから、両者において、圧縮応力による歪量に差が出るのは、右のような補強リング等と第一及び第二ビードの形状の相違からみて当然のことである。審決は、両者がともに面圧低下防止機能のための補強手段である点において共通していることをとらえて、両者が対応関係にあると認定したものであつて、両者が右機能を含め全ての点で同一であると認定したものではない。このことは、審決がその理由の要点5において両者の形状の差(したがつてそれに伴う機能の差)をとらえて相違点(1)を摘示しているところからも明らかである。したがつて、原告の右主張も理由がない。

三  取消事由(2)について

1  本願考案と第一引用例記載の発明の相違点に関する審決の理由の要点5のうち、前者の第一及び第二ビードと後者の補強リング等が対応関係にあること、後者の充填材がガスケツトの構成プレートであることを除き当事者間に争いがなく、原告が争う右の二点が審決摘示のとおりであることは前記二1に認定したところにより明らかである。したがつて、審決に本願考案と第一引用例記載の発明の相違点について誤認はない。

2  第二引用例の記載に関する審決の理由の要点3は当事者間に争いがなく、この事実と成立に争いのない甲第三号証によれば、第二引用例記載の考案も第一引用例記載の発明同様シリンダヘツドとシリンダブロツク間に介装されるガスケツトの面圧低下によるガス漏れを防止するための補強手段に係るものでガスケツトの構成プレートである金属板11′そのものにビードに相当する溝状の突起部14を形成してガスシール性向上をはかるものであることが認められる。したがつて、第一引用例記載の補強リング及び補強芯に代えて、それぞれ対応する位置に第二引用例に記載されたガスケツトの構成プレートである金属板に一体的に形成された突起部を二箇所設けることにより、本願考案のように第一及び第二ビードをガスケツトの構成プレートに形成するようにすることは当業者がきわめて容易になし得るところというべきである。

したがつて、この点に関する原告の主張は理由がない。

四  取消事由(3)について

原告が請求の原因四、3において本願考案の効果としているもののうち第一引用例記載の発明も第二引用例記載の考案も奏し得ないと主張している(ロ)、(ハ)、(ニ)について検討する。

(ニ)については、ガスケツトに補強リング及び補強芯を用いた場合に隙間が生じたときの問題であり、かかる隙間の有無について本願考案と対比することが相当でないことは、前記二、2に述べたとおりである。次に、(ロ)、(ハ)については、ガスケツトの構成プレートに二箇所のビードを一体的に備えた本願考案がこれを一箇所に備えた第二引用例記載の考案より勝る効果を奏するものといい得るとしても、前記三に述べたとおり、第一引用例記載の補強リング及び補強芯に代えて二箇所にビードを備えた本願考案の構成を採択することは当業者にとつてきわめて容易であるということができるから、二箇所にビードを備えることによつて奏される効果も当業者にとつて予測の範囲内にあるものというべきである。

したがつて、この点に関する原告の主張も理由がない。

五  よつて、原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

下面に副燃焼室aを構成する口金bを嵌入したシリンダーヘツドcとシリンダーブロツクdとの間に介装するガスケツトAにおいて、シリンダー孔4を囲む第一ビード6と前記口金bを囲み、該口金bに近接した第二ビード7のそれぞれをガスケツトAの構成プレートに形成した構造(別紙図面(一)参照)。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面 (一)

<省略>

別紙図面 (二)

<省略>

<省略>

別紙図面 (三)

<省略>

<省略>

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